ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

伊福部昭『シンフォニア・タプカーラ』と三浦淳史

 『シンフォニア・タプカーラ』は伊福部昭の札幌二中からの友人である三浦淳(1913-1997)に捧げられています。中学時代の二人の交流を伊福部は次のように述べています。(音更(オトフケ)は伊福部の父が村長をしていた十勝地方の村。シアンルルーとは十勝平野のこと)

 中学時代、私は夏休みと冬休みになると、必ず音更に帰っていたんです。三浦君とは離れ離れというわけですから、彼も話し相手がいなくなって寂しかったんでしょう。もう三日にあげず手紙を寄越してきました。メンデルスゾーンのヴァイオリン・コンチェルトの楽譜がなくて探していたのを、休みの間にみつけて送ってくれたりね。私も返事を書いたり、札幌に帰ると音更の様子を話したりして。三浦君にとっては、そうしたことが非常に珍しかったようです。彼の父上は北大工学部の教授で、パリで勉強をしてきた。三浦君自身も、いわば都会人です。音更の暮らしなんて見当もつかないんでしょう。その音更というところに、ぜひ一度行ってみたいなあ、そんなに世界が違うのかと。本当に心ひかれたようで、目を輝かせてね。三浦君という人は、中学生のころから話し相手でもあったし、私の音楽についてもずっと応援してくれていましたから。音更というところ、シアンルルーの世界を音にすればこういうことになるんだよというので、『シンフォニア・タプカーラ』を創って彼に献呈しようと思ったんです。

出典:木部与巴仁伊福部昭・タプカーラの彼方へ』(ボイジャー、2002)p170-171


 タプカーラを作曲したのは伊福部昭40歳の時ですが、10代のころを思い起こしていた様子がよくわかります。なお中学生といっても今の高校生くらいと思います。