ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

第20回演奏会評(1)

 『山田一雄演奏記録』をまとめられ、昨年10月の山田一雄作品展に来てくださった折田義正さんから、演奏会評が届きました。ブログ掲載のご承諾をいただきましたので全文を2回に分けて掲載いたします。

山田和男没後20年オーケストラ・ニッポニカ公演の感想(その1)
                               折田義正


1 若人の歌える歌
題名から感じるような溌剌、明るいまたは感傷的なものではない。聴いた瞬間、この作曲者は実に多くの管弦楽総譜を勉強したと感じた。このことは後で、門倉さんのブログ掲載のプログラムに載らなかった部分の記事を読んで了解できた(*)。しかし、特定の作曲流儀を、そのまま推し進めるのではなく、自分流に仕上げた(本歌どり?)ことは大したものだ。当時の作曲家で欧米に留学した人は、その固有の作曲技法と日本の現状とのギャップに苦しんだ(大沢寿人、尾高尚忠 他)。戦争に向かう時代もあり、困難な中に、山田先生や伊福部昭のように大成した人は大した才能を持っていたと思う。これが、コンサートの始まりであっためか、演奏はやや重苦しかった。これは、まさに小生が先生のメサイアの演奏に感銘を受けた20歳の頃の、物理学、化学、生物学等の巨大な内容に憧れを持ちつつ、青年期特有の鬱屈した心理状態の気分とよく一致した。今、考えれば、あの気分は若人の頃でしか持ち得ない知的心理状態であり、曲名はまさに知的なものと捉えられた。
(*編注:ニッポニカ20回演奏会の曲目解説


2 呪縛(印度)
この二つの曲名は「演奏記録」編集時に不明であった。この関係は門倉さんの原譜による指摘により明らかになった。編集を1人でやらなければ、このようなことはなかった。「演奏記録」が多少公にされたので、誤りの指摘を期待したい。曲は1に比しバレー音楽のせいもあり、分かりやすかった。ストラヴィンスキーの影響があると言われればなるほどと思う。山田英津子さんの声は大変清らかで、オーケストラの音程とも良く合い耳のよさも窺えた。ただ、魔性のある声とは思えず、モーツアルトのミサ曲、バッハの曲、ヘンデルメサイアなどを聴きたいものだ。「白夜」に始まり、この曲と「バリ島の月」を経れば、「白鳥の湖」の編曲・指揮は当然可能のことである。


3 もうじき春になるだろう
常々、この曲の伴奏には何か不満があったが、小オーケストラの伴奏で初演されたとのことで、疑問が解けた。すると「演奏記録」の事項も訂正する必要がある。


4 日本の歌
曲は昭和19年に作られたとあって、これも理解できる。昭和21年にこの詩で、よく演奏可能だったとは(GHQの検閲が甘かったのか)。「浦島太郎の後裔」と引き換えだったのか。曲はトロンボーン、チューバがなく、ハープ、打楽器のあることからも、たしかにマーラー交響曲第4を思わせる。先生は昭和20年1月日響定期でマーラー第4交響曲を演奏されている。この曲の1959年4月の大阪放響による放送時の独唱は伊藤京子だったと記憶する。3.4の山田英津子さんの歌唱は曲にマッチし、大変良かった。(続く)