ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

山田一雄『一音百態』「難関は父の大反対」

 その後音楽学校には「作曲科」が無い、ということを知り、「ピアノ科」を目指すことにして御茶ノ水にある東京音楽学校の分教場に通い、ピアノを本格的に習い始めました。しかし、「音楽をやりたいなどという息子は勘当もの」という時代でしたので、音楽の道へすすむことに父は大反対でした。

 一方のわたしも、こればかりは後に引けない。音楽以外に進む道など、考えられないのだから。話し合いは平行線のままに、双方譲らずの状態が続く。こうした中で、母はわたしの味方であり、唯一の心の支えであった。陰になり日なたになって、わたしを励ましてくれ、父への説得もかなり熱心にしていたようである。そして、すったもんだの末に、
「将来、かずおが困るようなことになったら、三人の兄たちで援助する」
という条件のもとに、ようやく父の許しを得たのである。
『一音百態』p78より)