ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

山田一雄『一音百態』「ひたすら作曲の道」

 中等科2年のときに阿佐ヶ谷に引っ越してまもなく、父がピアノをかってくれました。熱中して弾いてると隣の教会付属幼稚園の園長先生がやってきて、クリスマス会で発表するイエス様の劇に作曲してほしい、と依頼されました。一生懸命作曲し、クリスマス会では園児たちの劇を音楽が包み込みました。
 二人の妹たちは近くに住むアメリカ帰りの先生にピアノを習い始め、最初は「男の子」だからという理由でしぶっていた父も、1年ほどしてからピアノを習うのを許してくれました。最初は喜んでレッスンに通いましたが、だんだんと「師について習う」ことの意義が色あせてきました。

 …小さい時からそうだったように、わたしの心をとらえていたのは、ピアノを巧みに弾きこなすことよりも、ピアノを通して「わたしの音楽を作り出すこと」だった。そして、中学を出たら音楽の道に進もう――、という気持ちが次第にふくらんでいった。
『一音百態』p69より)