ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

山田一雄『一音百態』「土曜に家庭音楽会」

 スポーツに熱中する一方、家ではオルガンの前で過ごす時間が多かった和男少年は、次第に楽譜もわかるようになり、初歩的な作曲も試みました。音楽の知識は何にもなく、いたずら書きをするように曲を書いていました。

 そういえば、あれはだれのアイデアだったのだろう。いつのころからか、わが家では毎週土曜日に「家庭音楽会」を開くようになった。この日は三人の兄たちとわたしが主役になって、ハーモニカの四部合奏をお披露目するのだ。バスやテノール、ソプラノ、アルト用のハーモニカも、父が用意してくれた。
 “音楽会”の時間になると、両親をはじめ女中さんたち家中が、どっと茶の間に集る。そこで『カルメン組曲』や『サンタ・ルチア』『荒城の月』などを合奏して、最後は母のリクエストによる賛美歌で締めくくる、というふうだった。四部合奏のための編曲は、もちろんわたしの担当だった。土曜のために、わたしは一生懸命編曲した。
『一音百態』p47-48より)

 音楽といえば「曲を作ること」という生活は、そのころ一番充実した時間だったそうです。