ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

山田一雄『一音百態』「オルガンで音遊び」より

 和男少年は茶の間にあった燭台付きの立派なオルガンで遊ぶようになりました。教えてくれる人はいなかったので、自分で音を探り出しながら美しい音色に感動しました。

 だから、少年時代のわたしは、音楽に対していつもハングリーだった。しかし、このひもじくてハングリーな状態が、逆に自発性や創造性をかき立ててくれたように思う。クレヨンと画用紙があれば、そこに自由に絵を画くように、わたしはオルガンで音を作っていた。一枚の木の葉で笛をつくり、舟にして浮かべ、ままごとのお皿にするように、そこには創意工夫と新しい発見があった。そして、ひもじいだけに、いっそうきれいな音や珍しい音が、ビンビン伝わってきたのである。
 わたしは今、オーケストラのスコアを見ると、「大切にしたい音」というものが、自然にみえてくる。ひとつひとつの「音の価値」が、よくわかる。このことは、あの幼い日の“音遊び”の体験と、密接なつながりがあるように思えてならない。燭台付きのオルガンは、今日、音楽家であるわたしの出発点であった。(『一音百態』p38-39より)