ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

ドヴォルジャークの語る『新世界より』

 ドヴォルジャークスコアの解説から。

……世界の音楽の頂点に立ち、もっとも成功した交響曲の一つである交響曲新世界より』の概観は、いくつかの基本的特徴により、興味深いものとなっている。まず第一にあげられるのは、ドヴォルジャークをひきつけたアメリカの黒人やインディアンの民謡、あるいはアメリカの何人かの作曲家、とくにスティーヴン・コリンズ・フォスターの歌曲の民謡風の響きにみられる特色が、その表現素材の中に示されていることである。(中略)しかし大事なのは、ドヴォルジャークアメリカの民謡やポピュラーソングを一つとしてどこにも用いなかったことで、だからこそそのような[この交響曲からアメリカの影響を感じるというような]見方に対し、たとえば以下のように述べることで自分の立場を守った:『私が新しい交響曲の中に呼び起こそうとしたのは、黒人やインディアンの旋律に込められた魂である……私が書いた多くの旋律はすべて私固有のものだが、それらの旋律には、インディアン音楽の特性が具体的に表現されている。私はこういう旋律を主題として用い、現代的リズム、和声、対位法、それにオーケストラの色彩といったあらゆる手段を用いて展開させた』。


出典:交響曲第9番 : 新世界より / アントニーン・ドヴォルジャーク (Editio Supraphon, ジェスク音楽文化振興会, 1988) p8-9