ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

植村達男さん

 植村達男さんが亡くなられたと知らせが入り、今日行われた告別式に参列してきた。享年69歳。帰宅して書棚をみると、植村さんの本が2冊あった。『コーヒー、その知的香りのモザイク:私の情報整理学入門』(保険毎日新聞社、1991)と、『情報氾濫時代を生きる:新しいタイプの専門図書館』(勁草書房、1992)で、前者には1992年10月27日の著者サイン入り。初めてお目にかかったのは、植村さんが住友海上火災の情報センター長として活躍されていたころだったのを思い出す。仕事の関係で何度かお目にかかるうち、文学やクラシック音楽にも造詣が深くてらっしゃるのを知り、あれこれ教えていただいたものだった。
 告別式の会場には、植村さんが書かれた本が何冊も展示されていた。その中の『神戸の本棚』(勁草書房、1986)を手にとってページを繰る。植村さんは日本ペンクラブの会員でもあり、洗練された文章が綴られていた。神戸大学出身で神戸をこよなく愛し、いつも谷崎潤一郎を熱く語ってらしたものだ。本の中にも谷崎の「猫と庄造と二人のをんな」についてがあった。又芦屋出身の音楽家貴志康一のことも載っていた。マスカーニ作曲の歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」序曲がとても好きでらしたが、その理由も書かれていた。斎場にはそのマスカーニが流れ、思わず目頭が熱くなる。
 住友海上をご退職後は神戸大学東京オフィスの責任者として活躍されていた。いつでもいらしてくださいとお手紙をいただいたが、その機会がないままに過ぎていた。年末に職場の書類を整理していたら、企業史料協議会のニューズレターに連載されていた植村さんの「社史散歩」が目に留まった。最近は体調をくずされこの連載も休んでおられるという話を聞いていたが、訃報に接しもう続きは読めないことを知り茫然とするのみである。合掌。