ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

古関裕而『オリンピックマーチ』のヴィオラ

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古関『オリンピックマーチ』Vla

『オリンピックマーチ』の楽譜はスコアからパート譜を作成したのですが、ヴィオラは本来ハ音記号(五線の真ん中がハ=C)のなのに、写真のように所々にト音記号🎼が入っています。スコアは他のパートとの間隔をあまり開けられないので、こういうことがよくあります。五線から上の方へあまりはみ出ると上のセカンドヴァイオリンとぶつかって都合が悪いのです。

ところが1か所ならともかく、短いフレーズの間に何回もハ音記号とト音記号がでてくるので、頭を切り替えるのが大変でした。難しい音型ではないのに、音をとるのがとても難しい、ということになります。そこで、パート譜は全部ハ音記号に作り直してみました。

昨日のリハーサルで早速新しい楽譜を使ったところ、先週までの音程の悪さがうそのように吹き飛んで、気持ちのいいハーモニーを楽しむことができました。

團伊玖磨『交響曲第4番』のセカンドヴァイオリン

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團伊玖磨交響曲第4番』第2楽章の最後

先週から第37回演奏会に向けたリハーサルが再開されました。團伊玖磨交響曲第4番』を合わせていたところ、第2楽章の終りでセカンドヴァイオリンが一番下のG線を半音低く調弦しているのを発見。ヴァイオリンは上からE-A-D-Gという調弦なのに、スコアを見たら確かに最後の3小節はF♯が書かれていました。10小節前には「muta Sol in Fa#」と指示もありました。次の第3楽章ではまたGに上げなくてはいけないので大変です。
こういうのはヴィオラでも、芥川也寸志蜘蛛の糸』でありました。その箇所を練習するときは、弦を下げたり上げたりなかなか苦労します。まったくいろんなことがあります。

古関裕而『オリンピックマーチ』

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NHK朝ドラ「エール」

NHK朝ドラ「エール」では11月25日の放送で「オリンピックマーチ」が流れました。ドラマの中で、作曲はオリンピックの前年であることがチラっと語られました。ニッポニカで演奏するのはその1963年作曲管弦楽版「オリンピックマーチ」です。曲はその後吹奏楽に編曲され、そちらが1964年のオリンピック開会式で演奏されました。吹奏楽版のスコアは全音楽譜出版社から出版されています。

  • 古関裕而:オリンピック・マーチ/スポーツショー行進曲

出典:http://shop.zen-on.co.jp/p/590451

なお、この曲はその後、別の作曲家が管弦楽版を作成しており、いずれも全音楽譜出版社からレンタル譜として貸し出されています。

出典:http://www.zen-on.co.jp/rent/score_list_orchestra/

芥川作曲賞2020

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第30回芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会

久しぶりのサントリーホールで第30回芥川也寸志サントリー作曲賞の選考演奏会を聴きました。

第30回芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会

2020年8月29日(土)15:00 サントリーホール大ホール

■第28回芥川作曲賞受賞記念サントリー芸術財団委嘱作品

■第30回芥川也寸志サントリー作曲賞候補作品

  • 冷水乃栄流:『ノット ファウンド』オーケストラのための(2018-19)
  • 小野田健太:『シンガブル・ラブII-feat.マジシカーダ』オーケストラのための(2018-19)
  • 有吉佑仁郎:『メリーゴーラウンド/オーケストラルサーキット』オーケストラのための(2019)

■第30回芥川也寸志サントリー作曲賞選考および表彰

・選考委員:金子仁美、福井とも子、望月京 司会:長木誠司

指揮:沼尻竜典  管弦楽新日本フィルハーモニー交響楽団

https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/summer2020/akutagawa.html

第30回の候補作、第1曲目はベートーヴェンの第九交響曲を素材に、作曲者の自由な発想で切り貼りし、未知の世界へ誘う作品。耳になじんだ旋律があちこちに登場し、それが跳躍するかと思うとすかさず別のモティーフが現れます。タイトルの「ノット ファウンド」は、インターネットの情報をクリックするとたまに現れるリンク切れの表示。まさに若い感性とエネルギーに満ちた作品でした。

第2曲目はプログラムノートでは1990年代のJ-Popが素材のひとつとのことですが、そういえばどこかで聴いた覚えのある旋律が紡がれていきます。中でもピアノパートは重要で、おもちゃのピアノも横に置かれ、ソリストのようにメロディーを奏でます。低音の旋律が続くと思えばそれは隣のハープパートで、実に存在感のあるやりとりを楽しめました。

第3曲目は「メリーゴーラウンド」というタイトルの通り、オーケストラが指揮者を中心に二重の円を描いて配置され、コンサートマスターは右端に、4人のホルンパートは客席に背を向けて、といった具合。演奏が始まると視覚的にも楽しい舞台でしたが、配置の割には音響全体が溶け合って伝わってきました。

選考の結果は第2曲の小野田健太さんの作品が選ばれました。なお審査員の方々がおっしゃっていた通り、どの作品も作曲家の個性が沸き立ち、エンターテインメント性を備え、オリジナリティのある優れた作品でした。昨年の選考演奏会も聴きましたが、ずいぶんと様変わりしている印象でした。若い才能に拍手。

入野義朗没後20周年コンサート(演奏会プログラム)

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入野義朗没後20周年コンサート

入野義朗(1921-1980)の没後20周年を記念した、3回に渡るコンサートのプログラム。裏表紙には「Yosiro Vladimir IRINO 1921 Vladiostok - 1980 Tokyo」と刷られている。主催は「入野義朗没後20周年コンサート実行委員会」で、委員長は作曲家の藤田正典。なお演奏された入野義朗作品のうち、第1夜の5曲と第2夜の「四大」の全6曲のライヴ録音CDが出ている。

入野義朗没後20周年コンサート / 小倉多美子編

 JMLセミナー入野義朗音楽研究所、2000.6.25
 31p. ; 25 cm
 演奏会プログラム;開催日・会場:2000年6月25日 カザルスホール、2000年7月12日 すみだトリフォニーホール小ホール、2000年7月18日 北とぴあ・つつじホール
 内容:

  • 感謝をこめて / 入野禮子/高橋冽子、藤田正典 …1
  • [グラビア 入野義朗] …2
  • Concert I:室内楽をあつめて〈あめつちのことば〉 …3
  • Concert II:邦楽作品をあつめて〈邦楽展IV〉 …4
  • Concert III:JMLの現在〈21世紀へ〉 …4
  • Performer's profile:西沢幸彦(fl)、三橋貴風(尺八)、吉村七重(二十絃筝)、菊池知也(vc)、篠崎史子(hp)、山口恭範(perc)、安田弦楽四重奏団、アンサンブル・コンテンポラリー・アルファ …5
  • Program note …6
  • 20世紀最後の入野義朗 / 長木誠司 …8
  • 自由な運動性を秘めて:作品について / 楢崎洋子 …10
  • Dear Irino Yoshiro / 石井眞木、姜碩熙、ルチアナ・ガリアノ、許常惠、戸田邦雄、松平頼暁湯浅譲二、横山勝也 …12
  • 入野賞受賞者一覧 …16
  • Support, Proposers, Sponser, etc. (共催、協賛、後援、発起人、主催、運営委員、協力)…18
  • 入野義朗 年譜・作品表 / 三橋圭介作成 …19
  • 入野義朗没後20周年コンサートに御厚意をよせられた皆様 巻末

 

コンサートの内容

  • Concert I:室内楽をあつめて〈あめつちのことば〉(2000年6月25日(日)19時 カザルスホール)

  入野義朗:弦楽四重奏曲第2番(1958)
  飛田泰三:Le Bleu du Ciel(1995/96) 第18回入野賞受賞作品
  入野義朗:七つの楽器のための室内協奏曲(1951)
  入野義朗:尺八と筝の協奏的二重奏(1969)
  入野義朗:独奏チェロのための三楽章(1969)
  山口淳:弦楽四重奏曲第1番(1997) 第20回入野賞受賞作品
  入野義朗:Strömung(1973)

  入野義朗:二面の筝のための音楽(1957)
  入野義朗:二面の筝と十七絃のための三楽章(1966)
  入野義朗:二つの相(1971)(十三絃筝)
  入野義朗:三面の筝による三つの情景(1972)
  入野義朗:四大(1978)(三絃、二十絃筝、十七絃筝、尺八)
  柴田南雄:霜夜の帖(1980)(尺八)
  來孝之:十七絃筝とコンピュータのための「Mirage」(2000)
  古川聖:くつがえされた宝石箱(2000)(二十絃筝)
  野澤美香:Do the Monkey Do(2000)(唄、三味線、十三絃筝)

  • Concert III:JMLの現在〈21世紀へ〉 (2000年7月18日(火)19時 北とぴあ・つつじホール)

  伊藤弘之:夜の影 II(1998)(trb w/reverb system)
  山本裕之:Forma(1996)(pf)
  鈴木治行:二重の鍵(1994)(vn, pf)第16回入野賞受賞作品
  田中吉史:Attributes II(1996)(A-sax, pf)
  イグナチオ・バカ=ロベラ:インヴェンション II(1987)(vc)
  ドイナ・ロタル:Dor(1989)(A-fl)
  入野義朗:二つのファンタジー(1969)(二十絃筝、十七絃筝)
  

参考

入野義朗『十二音の音楽:シェーンベルクとその技法』

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入野義朗『十二音の音楽』
入野義朗『十二音の音楽:シェーンベルクとその技法』早川書房、1953.7

序 十二音の音楽とはどういうものか …5

「十二音の音楽」は「twelve-tone music」の訳語だが、最近では「ドデカフォニー dodecaphony」という言葉がよく使われる。

第1章 調性音楽から十二音の音楽へ …9

「旋法」の時代~ポリフォニーの出現~調性音楽の発達(器楽の発達と平均律の発明)~変化和音、非和声音の使用(ワーグナー)~様々な試み(ドビュッシー、ピツェッティ、ミロ―、プロコフィエフヒンデミット

第2章 シェーンベルクとその弟子たち …22

A.シェーンベルク(1874-1951):

A.ウェーベルン(1883-1945)十二音音楽の将来の可能性を徹底的に追求した
A.ベルク(1885-1935)伝統音楽と十二音音楽の結びつきを追求 「ヴォツェック」「抒情組曲」「Vn協奏曲」

第3章 十二音の作曲技法 …47

「12の音を1回ずつ用いた音列」を基礎に、音程関係を保つ

第4章 十二音の音楽の作曲家たち …61

  • J.M.ハウアー(1883-)ウィーン
  • E.クジェネーク(1900-)ウィーン~米国
  • B.ブラッハー(1903-)満洲~ベルリン
  • W.フォルトナー(1907-)ライプチヒ
  • H.ヘンツェ(1926-)ドイツ
  • G.クレーべ(1925-)マンハイム~ベルリン
  • R.レイボヴィッツ(1913-)ワルシャワ~パリ 十二音音楽の普及に尽力
  • P.ブーレーズ(1925-)フランス
  • L.ダッラピッコラ(1904-)オーストリア~イタリア
  • W.リーガー(1885-)米国

第5章 十二音技法を用いない人達 …72

第6章 十二音音楽の文献 …77

(1) ハウアー (J.M.Hauer)

  • 『音楽的なものの本質について』(ベルリン、1920)
  • 『メロスからパウケへ:十二音音楽入門』(ウィーン、1925)
  • 『十二音の技法:トローペ論』(ウィーン、1926)

(2) シェーンベルク

  • 「十二音による作曲」(『様式と理念』(ニューヨーク、1950)所収。1941年3月カリフォルニア大学での講演)
  • 「私の歩み」『ミュージカル・クウォータリー』1952に転載。

(3) レイボヴィッツ (Rene Leibovitz)

(4) クジェネーク

  • 『十二音技法に基礎をおいた対位法研究』(ニューヨーク、1940)

(5) アイメルト (Herbert Eimert, 1897-)

  • 『十二音技法教本』(ブライトコップ、1950)

(6) ウィーゼングルント・アドルノ

この他の本はまだ日本に入ってきていない。雑誌記事も多々ある。伝記は次の通り。

附記 現代音楽年表 …85

1859年ワーグナートリスタンとイゾルデ』作曲から、1951年シェーンベルク没まで、十二音音楽の発展に関係ある事項をまとめたもの。

                • -

旧字体新字体に改めた。作曲家名は『クラシック音楽作品名辞典』(三省堂、1996)の表記に揃えた。

「シェーンベルクとその楽派」年表

新ウィーン楽派と呼ばれるシェーンベルク、ベルク、ウェーベルンの年表を、ルネ・レイボヴィッツシェーンベルクとその楽派』の記述から作成してみました。ベルクとウェーベルンシェーンベルクに師事していたのは、共に1904年から1910年の時期です。シェーンベルクは1933年にアメリカに亡命し、弟子たちよりも長生きしました。

西暦 A.シェーンベルク A.ベルク A.ウェーベルン
1874 ウィーン生。両親はユダヤ
1883 ウィーン生。
1885 ウィーン生。
1886 Vnを学ぶ。
1897 ツェムリンスキーに学び弦楽四重奏曲を書く。
1898 歌曲を多く書く。
1899 弦楽6重奏曲「浄夜
1900 グレの歌」に取り掛かる。
1901 ツェムリンスキーの妹マチルデと結婚。
1902 ペレアスとメリザンド ウィーン大学音楽学の博士号。
1904 シェーンベルクに作曲を師事。 シェーンベルクに作曲を師事。
1906 「室内交響曲
1907 弦楽四重奏曲第2番」調性放棄。
1908 ゲオルゲ歌曲集」 「Pfソナタ 管弦楽のためのパッサカリア
1909 モノドラマ「期待」 「4つの歌曲」調性~調性停止。 弦楽四重奏の「5楽章」「管弦楽の6つの小品」
1910 弦楽四重奏曲」。ヴェデキントを知りマーラーと出会う。 VnとPfの「4つの小品」
1911 グレの歌 結婚。
1912 月に憑かれたピエロ 「5つの管弦楽付歌曲」
1913 「4つの歌曲」~1916 「ClとPfの4曲」
1914 「3つの管弦楽曲
1915 従軍1。 従軍~1918。
1917 従軍2。作曲ゼミナール~1920 ヴォツェック」台本完成。
1920 ヴォツェック
1921 「5つのピアノ曲」最初の12音作品。(~1923)
1922 「5つの宗教歌」伝統的対位法。
1923 「5つのカノン」伝統的対位法。
1924 「3つの宗教的民謡」以降全て12音作品。
1925 「4つの混声合唱曲」「3つの譚詩」。ベルリン芸術アカデミー教授~1933。 「室内協奏曲」 「3つの歌曲」
1926 「抒情組曲」12音作品。
1927 「弦楽三重奏曲」
1928 管弦楽の変奏曲」12音の一つの頂点。 「ルル」~未完。 交響曲ウェーベルンの独創性。
1929 オペラ「今日から明日まで」 アリア「ぶどう酒」12音作品。
1930 「6つの無伴奏男声合唱曲」調性への帰還。
1933 ユダヤ教に改宗。アメリカ亡命。
1935 カリフォルニアに移住。 「Vn協奏曲」。ウィーンで没。(50歳) 合唱と管弦楽「眼の光」
1936 「Vn協奏曲」「弦楽四重奏曲第4番」12音の頂点2。 「Pfのための変奏曲」
1938 「コル・ニドレ」 弦楽四重奏曲
1940 アメリカ市民となる。「第二室内交響曲」調性的作品。
1941 「オルガンの変奏曲」調性的作品。
1942 ナポレオン・ボナパルトへのオード」「Pf協奏曲」12音作品。
1943 「管楽のための変奏曲」調性的作品。
1945 ザルツブルク近郊で没。(61歳)
1946 「弦楽三重奏曲」
1951 ロサンゼルスで没。(76歳)

参考:ルネ・レイボヴィッツシェーンベルクとその楽派』入野義朗訳、音楽之友社、1965